相続・遺言の手続と後見制度                  
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任意後見と遺言

 新聞報道などで、身寄りのない老人がある施設に入っていて、施設の人間にだまされて遺言を書かされて財産を騙し取られた、というのがあります。

 悪い人間は、一番弱い人を騙して、自分の利益にしようとします。高齢化にともない、体のほうは元気だけれど、判断能力がない、あるいは衰えてきた、という人も増えています。社会の風潮も、大家族はなくなり一人寂しく老後を送る人が増加しています。

 そのような人を対象にしてできたのが、この任意後見制度というものです。

 早い話が、自分が元気なうちに、呆けたときの面倒を見てくれる人を決めておこう、というものです。

図を見てください。

自己決定と本人の保護を重視した任意後見制度      

 本人が前もって代理人(任意後見人)に、自己の判断能力が不十分になった場合には、自分の財産を管理してもらい、身上監護の事務についても代理権を与えるからよろしく頼むという「任意後見契約」を公正証書で結んでおくことによって確実なものにしようという制度です。

 家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督の下で任意後見人による保護を受けることになるわけです。

それが『任意後見制度』の概略です。


図に示すとおり、この任意後見契約は契約をしたらすぐに効果が発生するということではなく、将来本人の判断能力が低下した段階で任意後見人等が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申告して、任意後見監督人が就任したときから任意後見契約の効力が生じる、ということになっています。

 将来の安心のために契約しても、痴呆などの症状が現れずに元気に生涯をまっとうする場合には、この制度が使われずに済むことになるわけです。それはそれでめでたいことだと思います。

 もしも、運悪くこの制度を利用することになっても、法律は安全弁を作っています。それが、任意後見監督人というもので、彼は任意後見人を監督します。

具体的には、家庭裁判所は任意後見監督人から任意後見人の仕事の様子の報告をもらい任意後見監督人及び任意後見人を監督するというように2重のチェック機能となっているのです。これは後見人の権利の濫用を防止し、本人の保護を図ることを目的として、安心して制度を利用することができるように工夫されています。

その他、任意後見制度は知的障害者や精神障害者の親が自分の老後や死後の子の保護のために活用することもできるのです。


★任意後見契約 ★

最初に任意後見契約で後見人となる信頼できる人を選んでおくことが必要になります。

 任意後見人は、制限はありません。法人でも、また部門別に複数の人を選任することも可能です。

 親族はもちろんのこと、行政書士等や社会福祉士等の福祉の専門家に依頼することができます。

任意後見契約の締結は、必ず公正証書で作成しなければなりません。

■必要書類

・本人の戸籍謄本、住民票各1通
・任意後見受任者の住民票1通
・公正証書作成手数料 1件につき11,000円
・その他登記費用がかかります。


■任意後見契約の内容

 任意後見人に委任する事務の範囲については、財産管理に関する法律行為(不動産などの処分・賃貸借契約の締結・預貯金の管理・相続時の遺産分割協議など)と身上監護に関する法律行為(医療契約や福祉サービス利用契約の締結など)で本人と任意後見人受任者との話し合いで決め、代理権付与の対象となる法律行為を明確に特定します(代理権目録の作成)。

なお、任意後見人ができる委任事務は契約等の「法律行為」であって、介護サービス等の身の回りの世話である「事実行為」は含まれません。

従って介護サービスなどを希望する場合は、任意後見人が本人の代理人として要介護認定の申請や介護サービス業者等と介護契約を締結し、身の回りの世話はそのサービス業者が行うことになります。

■代理権目録(代理権を与える範囲)

1. 不動産、動産等すべての財産の管理・保存・処分等に関する一切の事項

2. 金融機関、証券会社、保険会社とのすべての取引に関する一切の事項

3. 定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払いに関する一切の事項

4. 生活に必要な送金、物品の購入、代金の支払いに関する一切の事項

5. 医療契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約に関する一切の事項

6. 登記済権利証、預貯金通帳、株券等有価証券又はその預り証、印鑑、印鑑登録カード、各種カード、貴重な契約書類の保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する一切の事項

7. 以上の各事項に関して生ずる紛争の処理に関する一切の事項(民事訴訟法第55条1,2項の訴訟行為、弁護士に対する上記訴訟行為の授権、公正証書の作成嘱託を含む。)

8. 上記各項に関連する登記、供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する一切の事項

9. 複代理人の選任、事務代行者の指定

任意後見契約が公正証書により作成されると公証人の嘱託により任意後見がされた旨の登記がなされます。


■任意後見監督人選任の申立

 加齢などによって、本人の判断能力が不十分な状況となったときに、任意後見受任者または本人・配偶者・四親等内の親族が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立を行います。

なお、本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任する場合に、本人が意思表示ができる場合には本人の同意が必要です。

 家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されたことで任意後見契約の効力が生じ、契約で定められた任意後見人が、任意後見監督人と家庭裁判所の監督の下に契約で定められた特定の法律行為を本人に代わって行います。


■任意後見監督人の職務

1. 任意後見人の事務を監督すること。

2. 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告をすること。

3. 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。

4. 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

と定められており、さらに任意後見監督人は、いつでも、任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め、又は任意後見人の事務若しくは本人の財産の状況を調査することができるとなっており、任意後見人の権利濫用を防止する仕組みとなっています。


■後見人への報酬

 後見人の報酬については契約内容等にもよりますが、専門家等に依頼する場合は月額3万から5万円前後が一般的です。

親族に依頼する場合は無報酬とする場合が多いようですがその場合は遺言を作成して配慮するなどのケースもあります。
後見監督人の報酬は本人の財産等を考慮して家庭裁判所が決定します。


任意後見制度の活用と遺言★

 任意後見制度はあらかじめ、自分は誰に面倒を見てもらいたい、費用も出してお願いしたい、と正に自己完結の人生を生きたい方には素晴らしい制度なのです。

 最後はご自分の意思で、人を選定して後見してもらうのはよいとして、死後の財産の処分はどうするのか、この点も決めておくことが必要となります。
            
 遺言は、生前のご自分の意思を後世に残すものです。もし、法的に有効となる遺言がなければすべて、法律(民法)の規定に従うしかありません。ご自分の意思が通じなくなります。   
 それでは、寂しいかぎりです。死後も、ご自分の意思通りに、あるいは信仰を貫いて葬儀を行なってもらい、財産の処分も、生前にお世話になった方に感謝の気持ちをこめて、お考えの通りにするのが至福のことだと考えます。愛する人のことを、人生の最後まで考えてあげられる、その崇高な意思は、きっと安らかで穏やかな眠りにつかせてくれることとなるでしょう。

●任意後見制度は、「自分のことは自分で決める。」という人間の尊厳に根ざした当然の権利を尊重し、援助を受けることが必要な場面でも本人の意思で援助の内容や範囲を決めることができるようにした制度です。 

 この制度と遺言を一緒に行なって、真の意味で自己完結の人生となります。     

                           
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