悩み多き『むち打ち症』
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■むち打ち症の概要
私の事務所に相談に来る交通事故の内容で、一番多いのが『むち打ち症』による損害賠償の相談です。
交通事故によって受ける外傷は、打ち身・捻挫・骨折・頭部外傷などですが、その中で、もっとも多いのが「むち打ち症」です。むち打ち症とは通称ですが、正式な診断名は、「外傷性頚部症候群」または、「頚部捻挫」と呼ばれます。
現在も多くの相談者がいますが、症状は様々ですがある部分共通するところもあります。
人体構造図をご覧になると分かることですが、首から背骨にかけて脊柱というのがあります。それらの各部分で人の手の指先から足の先までの神経を司っています。
ほとんどの哺乳動物は7個の頚椎で構成されている、とのことですが、それが衝撃を受けて異常をきたすと様々な症状が出てきます。
【頚椎のイメージ図】 |
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《医学辞典の説明》
頭蓋骨を支える首の部分の7つの背骨を頚椎と呼びます。一番上の頚椎(第1頚椎)は頭蓋骨の球状の底を受けるドーナッツ型(円座型・土瓶敷き型)をしており、環椎とも呼びます。第2頚椎は第1頚椎の環の内側に支えを伸ばした構造です。支えの軸から軸椎と呼びます。第1頚椎と第2頚椎が首を左右に回す動きを担当します。
第1〜第7頚椎全体で前後や左右に曲げる動きを分担します。首の太い動脈(頚動脈)は脳への血行ですが、脳に直結する動脈経路がもう一組あり、頚椎の骨のトンネルを通過しています。頚椎の異常でこの椎骨動脈の血行が障害されると脳の症状がでる場合があります。
頚椎の中を脊髄が通ります。脊髄は頚椎1つごとに枝分かれして頚神経となり、椎間孔を通って外にでると腕神経叢とよぶ中継所で行き先別に再編成されます。
頚神経は頭蓋骨と第1頚椎の間の第1神経根から、第7頚椎の下側から出る第8頚神経根まで8本です。
□このうち上方の神経根は後頭部や頚部を担当します。
□中ほどでは肩甲骨や肩付近を担当します。
□下方では橈骨神経・正中神経・尺骨神経など手を担当します。
頚椎の椎間板は腰椎に比べて小さく中身の弾力成分も量がわずかです。このため頚椎での椎間板の病気は腰椎での病状と異なってきます。
頚椎で脊髄の通る部分は狭くて余裕がありません。脊髄は脳から続く神経の束ですので圧迫に弱く、障害されると機能の回復が困難となります。
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医学的なお話をすることはできませんが、要するに、頚椎があるから人や動物は首を前後左右に動かすことができます。しかも、その中を脳から神経の束が通っているのです。
頚椎に対する強い外圧がかかれば、容易にどこかの神経が傷ついてしまうということです。
むち打ち症の被害者から、今までうかがった症状は
1.頭痛
2.頭重感
3.手足のしびれ、震え
4.握力低下(左右で大きく異なる場合がほとんど)
5.吐き気
6.肩こり、肩の疼痛
7.不眠
8.二重視
9.非現実的感覚
などです。必ず複数の症状を訴えるものであり、どれか一つという人はいません。
追突されてむち打ちになった人の話を聞くと、当然のことですが、・早いスピード ・大型車の追突 で重症になるケースが多く、また、振り向きざまの尋常の姿勢以外のときに衝撃を受けた時には症状が重いというのが一般的です。
後ろから衝撃が加わると、シートベルトはカチッと固定してしまいますので、体は前へ行きません。首だけが前に振られます。その後にゆり戻しで首は後ろに大きくあおられます。
その衝撃が頚椎をそして神経を痛めるのでしょう。
■むち打ち症の問題点
自転車やバイクで怪我をすると、ほとんど外傷を受けつつ、むち打ち症になる場合もありますが、多いのは追突されてのものです。
この場合は、ほとんど外傷はありませんので、じっとしていると健常な人と区別はつきません。そこにこの傷害の問題点が潜んでいます。
整理すると
1.外傷がない
2.現代医学の最新技術(レントゲン、MRI等)を駆使しても捉える事が困難
3.本人の自覚症状の訴えが他の人に分かりづらい
4.うそを言っても分からない(詐欺が後を絶たない)
こんな所が、むち打ち症を取り巻く環境が厳しい背景でしょうか。
損害賠償で一番大きな問題点は、後遺障害の等級認定がなかなか認められない、ということです。
大好きな自分の子供を抱きかかえることできなくなったり、今までやっていた仕事ができなくなり、仕事を変えたり、無職に追い込まれる人さえいます。
それなのに後遺障害とは認められない被害者がいます。
さらに医学が進歩することを願うとともに、認められるまで、頑張る覚悟も必要だと考えています。
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