『むち打ち症』の検査法
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■症状固定後の後遺障害診断書
症状固定と判断されると、次に必要なのは、後遺障害に認定されるか否か、となります。後遺障害に認定されなければ、まだ痛みやしびれを残して日々の日常生活の上でも、仕事の上でも大変つらい毎日を過ごしていながら、症状固定後の治療費は、健康保険を使い3割の自己負担を強いられ、その後の金銭的な補償は何も無いまま終わってしまいます。
次にやるべきことは、お医者さんに『後遺障害診断書』を書いてもらうことです。この診断書は、通常の診断書(ほとんどがA4)とは違い、A3用紙になっています。それだけ検査項目がたくさん載っています。
むち打ち症の診断にとって特に重要な箇所をピックアップしましたのでご覧ください。
これは、本物ではありません。複数の診断書を合成したものですので、イメージとして見て下さい。
【後遺障害診断書の一部】 |
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■神経
1.運動神経診察
a.筋力テスト
筋力テストとは、患者に力を入れさせてその筋力を見る検査であり、被害者の100%の協力が必要となるため、意図的に力を入れなければ正確な検査とならない欠点があります。
b.腱反射
腱反射とは、筋肉が急に伸ばされた時に、同じ長さを保とうとして収縮する反応である。これは、被害者の意志とは関係がないため、客観的な検査として重視されます。
2.感覚神経の診察
何らかの刺激をして“感じますか”と問い、“感じるとか感じない”とか答えるテストであり、被害者の100%の正直な協力が必要となるため、筋力テストと同じような正確な検査とはならない場合もある。感覚検査は、温度・痛覚と触覚などを診察する。
神経の異常を診察するに当たり、神経そのものについて触れましたが、被害者が意図的に操作できる検査は、後遺障害の認定にあたりあまり重要視されないことを理解してください。
■各種検査法
後遺障害診断書を書いてもらい、そこに書かれていることをある程度自分で理解できなければなりません。それらを読み解く上での参考にしてください。
1.レントゲン(X−P)
骨折や骨の器質的変化を見ます。しかし、血管や神経、椎間板等の微妙な部分を見ることはできません。
2.CT(コンピュータ断層撮影法)
脳挫傷や頭蓋内出血腫等を短時間で検査するのに威力を発揮します。
3.MRI(磁気共鳴画像法)
血管や神経、椎間板等の軟部組織の描写に優れています。また、任意の断層面を撮像できます。横断面だけでなく、矢状面・冠状面もみることができます。
4.脳波検査
脳が活動すると、脳の中には微弱な電気が流れます。この脳から発生した電気をとらえたものが脳波です。脳に異常があれば、異常な脳波を発します。異常脳波は、主に棘波と徐波に大別されますが、棘波は主としててんかん性の疾患に現われ、徐波は頭部外傷や脳血管障害等の脳の機能低下をきたすような病変に現われます。
5.腱反射テスト(深部腱反射の検査)
通常人は、膝の下をゴム製の打腱ハンマーで叩くと、膝が跳ね上がりますが、反射神経に障害があれば、反射は低下あるいは消失し、逆に、脳または脊髄に障害があれば、反射は強くでます。
反射運動は、その被害者が意図的に操作することは出来ません。刺激は脊髄を通りますが、大脳まで昇ることがないためといわれています。そのため、被害者が意図してごまかすことはできません。
6.病的反射検査
病的反射とは、正常の状態ではでてこない反射で、中枢神経系の障害(錐体路障害)の場合に陽性となります。
この検査は、検査を受ける人が意図して操作できないため、後遺障害を判断するために重要視される検査です。
a.ホフマン反射
患者の手関節を軽く背屈させ、検者は患者の中指末節を指で挟み、拇指で患者の中指の爪部を鋭く手掌側にはじく。拇指が内転・屈曲すれば陽性となる。一側のみ陽性の時では錐体路障害の疑いがある。
b.バビンスキー反射
足の裏の外縁を、先の尖ったものでゆっくりと、かかとから上に向かってこする。錐体路障害では、拇指がゆっくりと背屈し他の4指が開く開扇現象が現れる。下肢の検査に使われる。
c.ワルテンベルグ反射
母指除いた4指を軽く曲げ、その掌側に検査する人の示指と中指を正角に置き、その上をハンマーで叩くと全部の指が屈曲する。
d.トレナムー反射
指を少し屈曲させ中指末節を検査する人の指で掌側から弾くと全部の指が、特に母指が屈曲する。
7.スパーリングテスト
スパーリングテストは、頸部の神経根障害を調べます。頭を斜め後方へ押し付けると、神経根に障害がある場合は、その神経根の支配領域がある上肢(首ではありません)に放散痛やシビレ感が生じます。痛みやシビレ感の生じた部位によって、何番目の神経根に障害があるのかをある程度予測することができます。
これも、意図的に操作できる可能性があります。
8.ジャクソンテスト
ジャクソンテストも、スパーリングテスト同様に神経根障害の有無を調べる検査です。頭を後屈させ、押し付けて調べます。通常はスパーリングテストとワンセットで実施されます。
9.筋電図・神経伝導速度
筋電図検査は、筋の収縮に伴って発生する電位を測定・記録する検査法です。体を動かしたり、力を入れたりすると筋肉の細胞から微弱な電気が生じます。この電気をとらえて記録する検査です。針筋電図と神経伝導検査をあわせた2方法があります。
痺れ、麻痺、力が入らない、筋力低下等がある場合に、手や足の末梢神経障害(運動神経・知覚神経)の有無、程度、部位が科学的に判明します。
神経伝導速度検査は、同一神経の2点に電気刺激を加え、その反応電位の波形の時間的ズレから、その間の神経伝導速度を測定する検査法です。神経に異常があれば、伝導速度の遅延が起こります。そこで、運動神経、知覚神経の伝導速度を調べて、神経障害の有無、部位、程度を科学的評価します。
10.知覚検査
知覚検査は、筆とか針とかの素朴な器具を使って、触覚、痛覚、温度覚、位置覚、振動覚、二点識別覚などを調べる検査です。神経の障害部位や範囲と知覚異常の領域には密接な関係があるので、知覚障害の分布を調べることによって、神経の障害部位を探り出すのが知覚検査目的です。筋電図テストや神経伝導速度テストをするか否かを見極めるための前段階のテスト、という意味合いが強い位置付けになっているようです。
11.握力検査
神経麻痺を起こすと筋力低下をきたすことから実施されるものです。しかし、握力低下は、筋肉や関節が痛くて力が入らない場合や、手がだるくて力が入りにくいといった場合にも起こり得ることや、意図的に力を入れないことも可能で、参考程度にとどめられます。
12.徒手筋力検査(MMT)
神経が障害されたときは、その神経に支配されている筋の筋力が低下します。筋力検査は、どの神経がどの部位で、どの程度障害されているのか、ある程度予測をつけるために行います。
13.筋萎縮検査
筋萎縮とは、骨格筋が量的に減少することです。長い間寝たきりでいると足が細くなるように、麻痺が長く続いた結果などに起こります。筋萎縮の検査は、左右の筋肉の状態を視診、触診あるいは周径を測って調べます。
14.皮膚温検査
末梢神経の障害では、その障害が末梢の血流に影響を与え、皮膚温の低下などをきたす場合があります。皮膚温の状態を調べる方法として、サーモグラフィーなどがあります。
15.平衡機能の検査
グルグル回る、フラフラする、目の前が暗くなる、体がよろける等のめまいの原因が、身体のどの部位(内耳、脳、その他)の病気でおこるのか、またその病気がどの程度の重症度かを調べるために行う検査です。
目のまわりに電極を貼り付け、一箇所を注視したり、頭を前後左右に動かすなどして目の動きを記録したり、実際に特種なメガネをかけてもらって目の動きを観察することにより、めまいの有無、程度、種類を調べます。
16.腰椎穿刺検査
脳脊髄液を採取する検査のことで、原因不明の意識障害や髄液変化の神経疾患、具体的には、髄膜炎やクモ膜下出血の有無を検査するときに行われます。
髄液は脳や脊髄のクモ膜下腔を循環して、脳・脊髄の保護作用等の機能を有していいることから、背骨から針を刺して脊髄まで入れることにより、髄液の通過障害を診ようというものです。
17.眼底検査
この検査は、糖尿病検査で有名ですが、眼底(眼球の奥)の状態を見ると、脳圧亢進状態がわかるので、頭部外傷の検査でも眼底検査を行います。簡単で有効な検査です。
■むち打ち症の判定
自覚症状だけでは後遺障害と認定されることはありません。他覚症状といいますが、自覚症状を裏付けるXPやMRIの画像所見が必要になります。
XPやMRIの画像では、自覚症状を証明する異常が発見されないことが多くあります。これがむち打ち症が後遺障害に認定されるのが難しい所です。
そのような場合に、病的反射検査などの各種の検査がなされます。
これまで、たくさんの後遺障害診断書を見てきましたが、医師により書き方が違います。簡単に数行で済ましているのは、必要な検査をしていない場合もあります。
12級や14級の判定は、後遺障害診断書とXPやMRIの画像が決め手になりますので、被害者にとっては大変重要なものなのです。
主治医が、被害者の治療を懸命にやってくれていても、後遺障害の診断書の書き方がいい加減では、困ってしまうのです。
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