農事組合法人の設立

 農業を営む家庭を「農家」といっているくらいに、一つの家族を単位にして経営されているのが農業経営の一般的な姿です。
 
 もともと農地というのは、農地法により売買や貸借などの権利の移転や設定については非常に厳しい制約があります。日本の近代化の歩み、あるいは日本全体の食料自給の問題とも関連しています。
 そのような中にあっても、近年では、株式会社の農業参入も始まってきました。平成13年3月施行の改正農地法により、農業生産法人の要件が緩和され、農業経営の企業化へ向けた動きが強まってきている、という状況です。

 農業法人を分類すると、有限や株式会社などの会社法人と農事組合法人の二つになります。

 農業生産法人は、平成15年1月1日現在で、6,953法人が設立されていますが、そのうち農事組合法人は1,636組合であり、全体に占める割合は23.5%です。


■制度
 ・昭和37年 農業協同組合法の改正により誕生
          農業基本法により組合員の共同の利益増進を目的とした組合
          法人であり、自立経営とともに協業の助長が政策として掲げられ
          農民の協同組織に法人格を持たせることとした

■種類
 ・1号法人:農業経営を行なう法人

 ・2号法人:共同利用施設の設置等を行なう法人

 ・1号+2号法人:上記の両方を行なう法人

 さらに、組合員が出資を行なうかどうか、によっても形態が異なります。

 以上を一覧表にすると次のようになります。     

出資農事組合法人 非出資農事組合法人
出資別 @組合員は出資1口以上持つ必要あり
A出資額を限度とする有限責任
B剰余金が出たときは配当を受けることができる
C農業経営を行なうことができる
@組合員は出資の必要なし
A−
B−
C農業用施設の共同利用、共同作業にかぎられる
農業経営を行なう農事組合法人 農業経営を行なわない農事組合法人
農業経営 @出資組合に限る
A常時従事者のうち組合員とその家族以外の者は2/3以内
B農地の権利を有するには、農地法上の農業生産法人の要件を備える必要あり
@出資、非出資のどちらも可
A従事者の規制なし
B農地の権利を有する必要なし
農業生産法人 非農業生産法人
農業生産法人 @農地を取得して農業経営を行なうことができる
A農地を必要としない経営(酪農など)もできる
@農地の権利の取得はできない
A農地を必要としない経営(酪農など)はできる


■設立とその後の手続

 
農事組合法人・設立の手続
項 目 行為者 期日 備     考
発起人会の開催 発起人 随時 3人以上の農民等が発起人になること
事業目論見書の作成 発起人 名称、事業の目的、事業計画、資金計画、終始計画、出資等の記載を行なう
定款の作成 発起人共同 絶対的記載事項、相対的記載事項及び任意的記載事項
・発起人の印鑑証明を用意します。法人の印鑑の作成。
役員の選任 発起人 必ず組合員の中から選任要す。役員の定数の規定なし。監査役の設置は任意。
・役員選任決議書、就任承諾書
出資の払込 組合員 出資引受書(出資組合)、出資金領収書
組合員は出資1口以上持つ必要あり
×定款認証 定款の認証は必要なし
設立登記申請 理事 払込より2週間以内 法務局に申請
費用はかからない
銀行口座開設 理事 銀行 謄本と印鑑証明必要
出資金を入金管理
行政庁への届出 理事 設立登記から2週間以内 農事組合法人設立届を添付書類を添えて提出(都道府県知事又は農林水産大臣)
添付書類 ・登記簿謄本 ・定款(写) ・事業計画書又は目論見書 ・発起人会議事録(写) ※登記申請日が会社の設立日となります。
税務署関係 設立から2月以内等 一般の会社設立の場合と同じ届出が必要
10 社会労働保険 遅滞なく等 一般の会社設立の場合と同じ届出が必要
11 事業報告 毎事業年度の終了後3ヵ月以内 農業委員会への事業状況等の毎年の報告義務がある(15条の2第1項)

■剰余金の処分

 農事組合法人に剰余金が出た場合
 ・繰り越された損失がある場合は最初にそれを埋め、一定の準備金を控除して、
  その後に配当を行なうこととされている。

 ・一定の準備金とは、農業協同組合法に定められたもので、出資金額と同額の
  金額に達するまで、剰余金の10分の1以上を準備金を積み立てなければな
  ないこととされています。

■税金

 労務に従事した構成員の配当の仕方により分かれます。

 1)月給制の場合
   通常の法人税が課税

 2)事業従事分量配当(各人の従事の度合いに応じて配分)
   一律22%

 ※事業税は、農業の事業に対しては非課税


 
  当事務所では、農事組合法人の設立のお手伝いをさせていただいています。

 

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