自賠責保険との関係では、物損は自賠法3条の適用はありません。
しかし、その物が身体に密着し、かつ身体の一部の機能を代行している場合には「人損」として同条の適用があります。
(義眼、義歯、義肢、眼鏡、コルセット、松葉杖等)
■修理費用
修理可能(分損)な場合は、原則として、その部分の修理に要する費用が損害額となります。
(板金、部分塗装など)
修理不能(全損)の場合の場合は車両の時価額が損害となります。経済的全損とは車両修理額が時価額より大きい場合ですが、原則として時価額(流通例)に限定されます。
※時価額の算定・調査
時価額は特別な場合の除き、定率法や定額法などの減価償却の方法を用いない。いわゆる中古車市場において取得しうるにようする価額によって決められる、というのが判例の立場です。
★実務上、具体的な時価の判断は
レッドブック(自動車価額月報「オートガイド社」)の価格を参考とする。
レッドブックに掲載されていないような車の場合は、買ったときの価格やそれまでの走行距離、実際の車の状態を見て個別に評価することになります。
■評価損(格落ち損、評価落ち)
車両の修理によっても回復できない損害が生じた場合、その損害についても賠償の対象とすることです。
損害の内容により、事故歴により市場価格が低下修理後も機能欠陥を残すための価値下落する場合があります。具体的には、年式、走行距離、損傷の部位・程度、修理の程度・金額によって判断されることになります。
《判例の傾向》
1.格落ち損害が認められるケース
事故を起こす前から、車を買い替える予定があり、その車の下取り価格について合意ができていたような場合で、修理をした後の評価額が、合意するにいたった価格を下回るとき。
2. 〃 認められないケース
●ほとんどの場合は認められません。その理由は、修理がされた以上は原則として、原状回復がなされたとみなされるからです。
事故後もその車を使用し続けることは、この損害は何ら現実化していない、と判断されます。
■代車費用
事故車の修理の間、全損の場合は買い替えるまでの間、必要と認められれば認められています。代車使用は実際に代車を使用した場合に限られます。努力して費用を抑えた場合も、相当額を認められます。
代車使用の必要性・相当性が認められない場合は、公共機関やタクシー料金がそのつど損害として認められることになります。
もちろん必要・相当な範囲内に限られ、高級車だから高級車の代車が認められるといいうことではありません。仕事上どうしても必要な場合ならば認められる、ということです。
・代車使用期間は一般的に約週間〜約1ヶ月で必要・相当な期間に限られます。
■休車損害
営業車両の場合で、営業主に営業損害を与える場合がありますが、これをいいます。営業利益の減少が認められない場合は、当然休車損害も認められません。
代替遊休車両があって、それらを使用して損害を回避できる場合も認められません。
休車損害の算定は
減価償却額を除く
(休車車両の1日当たりの予想売上額−必要経費)×休車期間
となります。
外注すればそれが対象となりますが、外注費が営業損害額を上回る場合通念上相当の範囲内で認められます。
■休車期間
見積期間、買替期間、修理期間など通念上相当の範囲内で(1ヶ月を超える判例は少ない)認められます。
■登録諸費用
事故車両分について自動車税・軽自動車税…残存期間分が申請により返還できるので、賠償請求できません。
重量税…残存車検期間の割合に応じて請求できます。
(車検済み中古車は支払済み)
保険料…保険会社から解約返戻金をもらえるので、損害は生じません。
自動車取得税…販売価格の9割を課税標準(50万円以下は免税)50万円以上は、自家用車5%、軽自動車3%の税、残存期間に応じて賠償請求できます。
買替車両分について認められないものは重量税(新車購入の際に要する)…新車への買替は認められていないため認められません。
自動車税・軽自動車税…保有に対する税金だから認められません。
保険料、点検整備費も認められません。
認められるものは消費税、登録諸費用、登録法定費用(2500円〜3020円)、登録代行費用(1万円程度)、車庫証明法定費用(2500円)、〃代行(1万円前後)がみとめられます。新車への買替要求は民法722条で金銭賠償の原則により、このような要求に応じる必要はありません。
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